Beloved

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 店員は美樹の意図を理解するものの、ちらりと少年を見て押し黙る。  少年と美樹は思い込んでしまったが、よく見ると二十代前半くらいだろうか。特徴のある真っ白な制服からは、甘い匂いがした。 「あ、すみません」  少年、もとい青年は美樹を見るなり、頭をがばっと下げた。その角度90度。 「俺、そこにあるケーキ屋なんですけど」  それだけで全てを察するには十分だった。今日はクリスマス、しかも特別な。忘れて、いたけれど。 「それで大量に作っていて、そしたら卵が足りなくなっちゃって」  青年のあまりの慌てぶりに、美樹は柔らかく微笑む。  こんな日でも職務を全うし、みんなの為にケーキを焼く。その行為は神聖で尊く、冒しがたい。
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