ツインテールとシュシュ(2)

11/30
前へ
/30ページ
次へ
「納得いかないって、なにが?」  杉本くんのげんなりした声がわたしの思考を遮断する。「さっきからブツブツブツブツ……」  へ? と間の抜けた声が出た。「わたしブツブツ言ってた?」  彼はなかば切って捨てるように指摘する。「自分の世界入りすぎなんだよ」  カッと顔が熱くなった。いかにもエリナに言われそうなことを彼に言われてしまって。  8時頃には品川駅に着き、いつもならダッシュする通学路をのんびり歩いた。駅を出た時点で何人かの梅中・梅高生の姿が見られ、学校に近づくにつれその数は増してゆく。こんな当たり前の光景がわたしにとっては新鮮だ。それにしてもきょうが雨でよかったと思う。なぜなら傘が隠れ蓑になってくれて、彼と並んで歩くことにさほど気後れせずに済むから。  が、そのとき後ろから脇を通りかかった自転車がキッと音を立てて止まった。乗り手がわたしたちのほうを見た。「おう杉本っ」  女子だった。声は低めだが、大きく張りがある。雨ガッパを纏っているので小柄なことくらいしか姿形はわからない。というか、わたし自身がその人から顔を逸らしていた。とりあえず杉本くんの様子から、エリナのような彼の友人でないことは明らかだった。彼はやや縮こまった声で、おはようございますと言った。 「あんたきのうは」言いかけ、その人はわたしを見るなり声を上げた。「なにもしかしてカノジョ連れ?」 「いえ……」と否定しかけ、しかしなにを思ったか彼はうなずいた。「ハイそうです」 「マジ? へえやるじゃんコノコノォ~」
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加