ツインテールとシュシュ(2)

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 杉本くんは爆睡していた。わたしたちのシリアスな失恋トークをよそに、畳に敷かれた布団にくるまりクークー寝息を立てていた。コラ起きろっ。瑞希さんがつま先で軽く蹴りを入れると、すいませんっ! と彼は目を覚ました。「なんだ姉ちゃんか……」 「なんだってなによ。あんたがそこいたらこのコが寝る場所ないでしょ。勉強しなくていいの? こないだのテスト、どーせ全滅だったんでしょ? もう! ワイシャツ脱ぎっぱなしじゃんちゃんと出しといてよ。あーそれと洗い物はお願いね」  数えきれないほどの「はい」を連発しながら彼は立ち上がる。なんだかひどくうなされているふうだったので、「大丈夫?」とわたしは聞いた。  姐さんが夢に出てきた、と彼は目をこすりまじまじとわたしを見た。「あれ? なんか、変わってないね」 「うん」と小さくうなずき、わたしは彼から顔を逸らした。泣きやんでからまだあまり時間が経っていないので。  その後は2人の指示どおりに過ごした。わたしは使用済みの弁当箱を杉本くんに預け、シャワーを浴び、買い置かれていた歯ブラシをもらい歯を磨いた。気がつくと、時刻は22時近くになっていた。はじめての門限破り。就寝前、わたしはおそるおそるケータイを開く。メールの着信があり、ドキドキしながらそれを読む。『わかった。明日はちゃんと帰ってくるのよ。先方のご家族によろしく。くれぐれも粗相のないように』とお母さん。わたしは溜飲下がる思いで、先ほど杉本くんが寝ていた布団に体をうずめた。なお、彼は押入で寝るという。ドラえもんかっ。  翌朝は4時半頃に目が覚めた。環境が違っても体内時計はだいたい正常に働くようだ。トイレのため立ち上がり戻ってくると、押入の襖が開き杉本くんが起きてきた。夜中地震あったけど須藤さんヘーゼンと寝てたね。寝ぼけまなこで小バカにするように言いつつ、彼は隣接するダイニングキッチンへ移動する。わたしがなんとなくそれに倣うと、彼はテーブルにグラスを2つ用意した。牛乳だよねと聞かれたので、わたしはうなずいた。
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