ツインテールとシュシュ(2)

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 のち雨は本降りとなり、帰ってきたときにはすっかり濡れてしまっていた。やっぱりついて行かなきゃよかったと思いつつ、わたしはドライヤーで髪と服を乾かした。時刻はまだ5時半。まあゆっくりしてていいよ。申し訳なさそうな杉本くんの言葉に甘え、わたしはまた彼の部屋のふとんに横たわった。昨夜はほとんど意識しなかったが、まさにここで、彼は毎日寝起きしているのだ。枕やシーツに付着した硬い毛髪を見つけてはそんなことに想像をめぐらせた。でもコレ、ほんとに髪の毛だよね……? あらぬ想像にブレーキをかけるべく、慌てて別の方向へ目をやる。室内に家具類は少ない。あるのは勉強に使うと見られるちゃぶ台、加えて本棚やストーブ程度だ。そして本棚に並ぶ書籍も教科書や参考書など学習に関わる物にほぼ限られ、マンガ雑誌なら床に何冊か放置されているものの、コミックスの類いは皆無だった。さすがは梅高生とわたしは自分もその1人であることを忘れて感心してしまうが、一方でやはりある種の疑念を抱かずにはいられない。なんせ思春期のオトコノコなのだ。表から見えるものだけが実態ではないはず……。 「男子の生態ならあたしのが詳しいよっ☆」  キラン! とウィンクしながらエリナが現れたところでうたた寝から覚めた。時刻は6時半を過ぎたばかりだった。半端に開いたままの引き戸の向こうから、テレビの音声などに加え杉本くんと瑞希さんの話し声が聞こえる。  わたしは制服に着替えてリビングに移り、おはようございますと瑞希さんに声をかけた。ちょっと気恥ずかしい思いをたたえて。おはよ。たいへんだったね朝っぱらからコイツに付き合わされて。彼女が苦笑いを向けてくると、わたしはあえて「はい」と応じた。
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