ツインテールとシュシュ(2)

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 普段は見ることのない朝のニュース番組に目をやりながら、彼に出されたトーストと目玉焼きをいただく。震災からきょうで2か月。相変わらず原発事故は収束が見えないらしい。暗い気持ちでテレビの解説に見入っていると、ふいにゆうべ預けた弁当箱がわたしの前に置かれた。えっ作ってくれたの? わたしが言うと、2つ作るのも3つ作るのも同じだしと彼は言った。それよりさっさと食ったら? 7時半には出るから。  急かされるように食事を終え、身じたくを済ませた。洗面所を彼に明け渡すと、瑞希さんの部屋のドアが開き、「ユカちゃん」と声がかかった。  そこは6畳ほどの洋室だった。ベージュのカーペット敷きで、ベッドやデスク、それにドレッサーが配置されるなど、杉本くんの質素な和室と比べて現代的な空間となっている。その点はやはり、居候の学生と自活する社会人の差なのだろう。その他、本棚には『ワンピース』はじめ流行りの少年マンガがずらりと並んでいる。が、これらの大半は、もとは実家の杉本くんの部屋にあったものだという。要は同居するに当たっての『持参金』ということらしい。あいつのモノはあたしのモノと瑞希さんは豪語する。ジャイアンかっ!  それはさておき、招かれたわたしはドレッサーの前に促された。目的は言わずもがなで、かわいくしたげると瑞希さんは意気込む。彼女はすでにメイクを済ませたようで、マスカラやアイライナーによって大きな目の輪郭が強調されるなど、マネキンのように整った顔立ちが華やぎを増して見えた。ただ、リップの色は控えめな赤でチークは入っていない。同性から見て嫌味な感じにならないよう心がけていると彼女は言う。なるほど、たしかにその分印象はクールで、男性の視線をあまり意識したものになっていない。
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