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息を潜め、家に忍び込む。寝室の場所は脳にインプットされている。
「意味ない、かな?」
それでも手袋をしてしまった。
縦型の重厚なドアノブに手を伸ばし、鍵穴に合鍵を差し込もうとする。
こんな物すら、いとも簡単に入手が出来るなんて、この国の安全神話は崩壊していた。
「壊れだしたのは今に始まった事じゃない、か」
独り言が増えるのは緊張している証拠だ。しかし次の瞬間、驚きで体全体が強張る。
「開いて、る?」
全身の毛が粟立つ。
キケン! キケン! キケン!
警鐘に従い、引き返そうとした時、何かが聞こえた気がした。
気付けば弾かれたように扉を開け放ち、土足のまま階段を駆け上がっていた。
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