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私は看護師だった。そのせいだとは思いたくなかったけれど、困っている人がいたら悲しいかな、放っておけない体になっている。
「なんて……患者さん達を残して、ここに来てる時点でアウトなのに……!」
脳裏には柔らかな黄色。院内でも好評だった、おばあちゃん達の玉子焼き。思い出すと鼻の奥がツンとし、胸が苦しくなる。
「ここって……」
カシャカシャとカメラのシャッターを押すみたいに、脳内に映像が次々に現れる。目指していた場所だ。
不気味さを醸し出す絶妙な開き具合の扉に近付くと、おそるおそる覗く。今にも飛び出してしまいそうな心臓が痛い。胃も痛い。
自分の鳩尾辺りを押さえると、むせ返りそうな匂いに思わず息を呑む。
「……ひっ!」
短い悲鳴しか上げる事が出来なかった。
薄暗くて定かではないが多分……彼が真っ赤な血だまりの中にいる。
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