第4話

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「おじゃまします。」 そう言って入ってきた、元旦那。 玄関先でそんな話をしてたから、 聞いていたのだろう。 「さあ、海翔。 学校のお道具を持ってきなさい。」 そう言う。 はい。 と海翔は言うことを聞いてる。 今日、 今、 連れて行くというの? 「ちょっと、どういうつもりなの? 話もなにも出来ないじゃない。 ちゃんと話をさせてよ!」 「海翔は今日でもいいって言ったんだ。 オマエが泣いてるの、見たくないって。 もう決めてるんだ。 うちに来ること。 だから、 そんな顔で別れるな。 そんな顔が最後の顔だって、 ずっと思い出すことになるんだから。」 「ちょっと、康宏さん。」 お母さん… 「よくそんな酷いことが出来るわね。 一旦捨てたくせに。 この子たちがどんな思いで今まで生きてきたか知ってるの? やっと普通に暮らせるようになったのに。 海翔は渡さないから。 そんな酷い人には。」 言葉のない元旦那。 「ばあちゃん。 ぼく、お父さんと行くよ。 お父さんが欲しかったんだ。 毎日、美味しいごはん、ありがとう。」 カイちゃん… そう言って、お母さんもなにも言えなくなってしまった… リュックとランドセル、お道具バッグに、 いっぱい荷物を押し込んで、 小さい体で、持ってる。 海翔… 抱き締めると、 「ママ? 泣かないで? ママが泣いてるところ、 ぼく、嫌いなんだ。」 ハッとした… この子を抱き締めてるときには、 いつも泣いてた。 小さい頃。 覚えてるんだ。 この子には、 私の悲しい所しか、見せてないんだ…
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