第4話

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「少ないけど。」 そう言って渡された封筒。 「そんなもの要らないわ!」 涙を出すまいとするけど、 流れ出て止められない。 着るものとか勉強デスクとか。 もう準備をしてあるという。 ここで着ていたものは処分してくれと。 海翔が思い出して、 寂しくなるからと。 海翔の荷物を、 元旦那が持って、 封筒を下駄箱の上に置く。 「じゃあ、行くから。」 そう言うと、 「ママ、元気でね?」 必死で笑ってる顔が、 泣いてる。 泣きながら、 そんな顔を見せまいとして、 笑ってるんだ… こんなに… こんなに我慢させてたんだ… 私は、 ずっと、この子に、我慢させてたんだ… やっぱり私に母親の資格なんてないんだね… 自分のことばっかりで。 「海翔も。 寂しくなったら、いつでも帰ってきていいのよ? 電話だってしてきなさい。 待ってるから。」 海翔、ごめんね…? そう言って、抱き締めて、 最後に笑って見せた。 最後に見た顔が、泣いてたんじゃ、 泣いてるだけの弱い母親だとしか、 思い出せないものね…?
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