第4話

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体調は最悪だったけど、 私は家を出た。 この家で暮らすのは辛すぎる。 ここに居たらきっと毎日泣いて暮らすことになると。 そんな私を海翔は見たくないだろう。 もし帰ってきてくれたら、 すぐに帰るつもりで、 身の回りのものだけを持って、 部屋を借りた… お母さんには妊娠のこと、 バレちゃった。 だから、 そんな体じゃ、ここに居た方がいいと言ってくれたけど、 私はそう決めたんだ。 自分のことだから。 きっとお母さんだって辛いだろう。 海翔が何年もここで暮らしたんだから。 大きくなっていく海翔に、 「すぐに着れなくなるわねえ…」 そう言いながら、 でも、嬉しそうに服を買いに行ったりしてたのを思い出す。 そんな両親を見てるのも辛い。 だから、 今度は誰にも迷惑をかけないように、 一人で生きていきたいと… 遙人にはそんなことは話せない。 「今ちょっと忙しいのよ。 落ち着いたら電話するね?」 妊娠がわかったときにそう言って、 そのまま。 もうすぐひと月経とうとしてる… 遙人も次のクールの撮影に入ったらしくて、 時々メールが来るぐらい。 遙人。 わたし、もう、 あなたには会わない。
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