二月の君は

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 コーヒーを淹れてくれた彼女に礼を言い、湯気の立つ白いマグを受けとる。 「ここ、一人で寒くない?」 「うん、一応冷える」  部屋に通された時、僕は彼女がここにあった毛布を手早くたたんで持ち去るのを見ていた。 「この家……ストーブとか、暖房器具はないの」 「うん」  唯は事もなげに頷く。 「寒かったら、膝に何か掛けたらいいし」  窓ガラスがカタカタと風に震える小さな音が聞こえてくる。  部屋の主が茶色と白でまとめたインテリアは落ち着くが、広い板張りの部屋は座ってテレビを観ているだけでも寒いに違いないのに。 「体に障るよ。……買ってもらえばいいじゃない」  すると僕の横に座った唯は「いい」と首を横に振り、 「暖房のあの熱気、あんまり好きじゃないから」  その答えに僕はそっと息をついた。 「我慢は止しなよ、唯」 「別に我慢してないけど」  信じないかな、と頬を膨らませて僕を見る瞳。  信じられるわけがない。
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