第1話

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「親戚の子。優輝君って言うの」  人に会う用にバッチリメイクをし、白いワンピースを着たアイコさんは、笑顔でオレを紹介した。  朝、眠気眼を腫らしていた人物と同一だとは、到底思えない。  目の前には、編集部の金本正という男と、あの若い女――麻須美が、アイコさんと、物珍しそうにオレを交互に見てきた。  金本は、いかにも真剣質です、と言った風な皺一つないスーツを着こなし、掛けた眼鏡を何度も上下させていた。  麻須美は、どこか楽しそうに、でも、どこかで疑っているような目でオレ達を見ていた。 「今、丁度夏休みだから、色々と家のことを手伝ってもらっているの」 「そ、そうなんですか」  どもりながら、金本は立ち上がり、オレに何か紙切れを差し出してきた。  一瞬、目の前の男がちらりとアイコさんを見た気がした。 「こ、こんにちは、優輝君。僕は、金本と言います。愛子先生とは二年ほど一緒にお仕事をさせて頂いています」  普通に立てば、金本の身長はオレなんかよりも頭一個分くらい高いのだが、どうにも気弱な性格なのか、わざわざ目線を下げてくる。  だからと言って、目線は泳いでいて、合わない。  それが癪に障った。  アイコさんが、柔らかい口調で言う。 「金本くんはね、仕事だけじゃなくて、偶にプライベートでも私のサポートをしてくれるの」 「そ、そんなこと……」  アイコさんの言葉に、金本は僅かに頬を紅潮させ、益々オレから視線を逸らした。  だが、逸らした先に誰がいるのかが分かって、更に気に入らなかった。 「どうも、初めまして」  内心を隠したかったけど、オレの声音は普段よりキツイものとなる。  何がそうさせているのか、オレ自身が一番分からない。  ただ、気に入らない……オレの本能が、そう告げていた。  金本が怯えた仔犬のように、落ち着きを失くす。 「あ、す、すみま……」 「ねぇ、優輝君。その目、コンタクト?」 「え?」 「ひゃっ」
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