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掃除のことなのか、洗濯のことなのか、染み抜きのことなのか……
何が大変なのか分からないオレに、コーヒーカップに湯を注ぐ麻須美は、当然のように言う。
「愛子先生のことよ」
「へ?」
益々分からなかった。
「なんで?」
「なんでって……だって、我侭だし、冷たいし、いっつも怒ってるような顔してるし」
「アイコさんはそんな人間じゃないよ!」
本当にこの女の言っていることが分からない。
我侭って、どこが?
いや、確かに破天荒な面もあるけど。
冷たいって……誰が?
怒っている顔なんて、普段……
今日、初めてあんなアイコさんを見たけど、いつもはそうじゃない。
あんな感じじゃない。
混乱するオレに、麻須美が笑った。
「へぇ、愛子先生、優輝君には優しいんだぁ」
腹ン中が読めない女。
オレは一歩下がる。
すると、麻須美は二歩前に出てきた。
顔が近付く。
「ちょっ……」
オレが顔を背けようとした、その時――
囁く声。
「捨てられないようね」
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