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八家又はそのどれにも脇目も触れずに先へと歩く。その際にも部隊への勧誘の声はあったがどれも見向きすらしなかった。
そして八家又が辿り着いたのは「無所属希望」と書かれたテントだった。
「名前は?」
「八家又寺。」
「珍しい名前だねぇ。」
椅子に座っていた担当の男はサラサラとペンを走らせる。
「歳は?」
「16。」
「若いねぇ。無所属の理由は?」
「入る気がないからだ。」
ポカンとした顔をする男はペンを落としてしまう。
「…っと失礼。前例のない理由で驚いてしまったよ。普通なら「俺を誘う部隊が来るまで~」とか「俺が部隊を立ち上げるから~」とかだったから。ま、君みたいなのもいていいか。はい、無所属の証明バッジ。」
八家又は男からバッジを受け取るとすぐに帰ろうとする。
「こらこらどこ行くんだ。」
「?」
「新しい兵士にはコートを配るんだ。色は好きなのを選べるから好きなのを言っていいよ。」
「黒だ。」
「黒?今までに黒を選んだ人はいないけどいいのかい?」
「ああ。」
「ふぅん、物好きだねぇ。じゃあ今夜部屋に届くから。」
言われるが早いか八家又はさっさと帰ってしまう。
「……黒ねぇ…。」
男は八家又の背中をずっと見つめていた。
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