580人が本棚に入れています
本棚に追加
僕が最初に、その男と出会ったのは、見たこともない異空間でのことだった。いや、異空間、というと語弊があるかもしれない、正確に言えば異世界、と言ったところだろうか
僕が元居た地球、そして転生後の魔法世界、そのどちらとも異なる世界
正式名称なんて知らない。そもそも、僕は今いるこの世界の名前だって知りはしないのだし、案外世界に名前なんてないのかもしれないけれど、ともあれ異世界―――、仮に狭間の世界とでも呼んでおこうか
僕がその世界へと飛ばされてしまったのは、この魔法世界に来て、まだそんなに経っていないころの話だ
そのころ、僕は―――、歪魔法を持て余していた
僕は確かに、転生前に神の世界で、女神さまに歪魔法の技術を叩き込まれた。けれど、考えても見よう、僕というのは最弱とまで卑下される生き物なのだ
それだけで使いこなせるようになるわけもない
ようするに、僕は歪魔法の練習不足だった
人は練習不足を痛感した時、何をするか。当たり前の話だが、練習する。当然だ
だから、僕も歪魔法の練習をすることにした
―――、結果から言えば、それが間違いだったのだ。僕は僕自身の体質を甘く見ていた。人生万事マイナス補正とでも言うべき、僕の人生を
なにをやっても上手く行かない、僕の人生というものを
自宅のリビングで魔力を練ったその時―――、世界がくらんだ。目の前が歪んで、暗くなる。光を捻じ曲げるかのように、絶望的な色合いの空間が出来上がる
「・・・・・・、え、は?」
この時、僕はたぶん、こんな間抜けな声を出したのだと思う。幸いだったのは、この瞬間、僕の周りには誰もいなかったことだ
珍しく引きこもりがちな二人―――、すなわちシャシャとココロアちゃんは出かけていた
だから、この空間の歪みに巻き込まれたのは僕だけだった
最初のコメントを投稿しよう!