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---とある高校の、とある部室---
「小日向君、そこの青い背広の奴取って」
「先輩の方が近いじゃないですか。自分で取ってください」
「良いじゃないか、私は先輩なんだ。もう少し優しくしろ」
「じゃあ何か先輩らしい所見せてくださいよ」
「取ってくださいお願いします」
「微塵もないな」
と、もう半ばお約束みたいになってしまっているやり取りを、俺は先輩--大宮千夏と繰り広げる。
……って、ちょっと待て。背広ってなんだよ。違うだろ。背表紙だろ。
「あぁ、私は本が大好きだからね、当然だろう」
あ、駄目だわかんね。
「分からんか?」
「分かりませんよ」
「これだからゆとりは……」
「違ぇよ」
「知らないのか?私は今年で三十路卒業だ」
「聞いてねぇよってか留年!?留年って事!?」
確か、2年生でしたよね!?何年生だよ!
「もうじきアラウンドフォーティーだよ」
「バリエーションがあれば良いわけじゃない!」
嫌なリアルさだ。いや、有り得ないけど。それにゆとりじゃない。(株)くらい読めるわ。
「え……なにそれ。かっこ株?」
「おい学年1位」
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