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「うぉー、うまそう」
二人は料理が並んでいるテーブルのイスに座り、アルスはそのまま箸を持ち食べようとしていた。
「アルス!」
そんな様子を見てエレナが怒鳴り声を上げた。
いきなりの声に手を止めると、アルスは何かを思い出したようなそぶりをして持っていた箸を元の場所に戻した。
「忘れてた、ごめん」
アルスは両手を胸の前で合わせて目をつぶった。
「いただきます」
片目だけを開けてレーナの方を見ると、満足げな顔をしてうんうんと頷いていた。
「はい、召し上がれ」
レーナもアルスに続き手を合わせて、いただきますと言い、二人は目の前の料理を食べ始めた。
アルスは腹が減っていたのか、急ぐように食べていたところ
「アルス、ちゃんと噛んで食べなさい」
レーナはアルスの食べ方を見て注意してきた。
「はいはい」
アルスはいつものことだと思いながら返事をした。
レーナは昔からこういった生活習慣や礼儀についてはうるさく、よくアルスを叱っていた。
お風呂に毎日入る、歯を磨く、家に帰ってきたら手洗いうがいをするなど、他の家庭の人は普通にやっていることをアルスは小さいころ面倒だと思いっていたらしく、ときどきサボっていた。
それまで甘やかしていたレーナだが、これではダメだと思い、アルスのためにと口うるさく言っているのだが、十八歳になっても言葉使いだけは直りそうにない。
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