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あれ以来、上田達の虐めは無くなった。
そして、私はクラス内で番長と呼ばれるようになった。
あまりいい響きではないが、やってしまったのだから仕方がない。
「番長」
声をかけてきたのは美香だった。
「番長はやめて。何か用?」
「あのさ、聡美が女の子に告白されたみたいなの」
「俺の次は聡美か。人気者は辛いね」
「それでさ、聡美もまんざらではないみたいなの。私、どうしたらいいの?」
「そんな事、俺に訊かれても……」
「元に戻った時にどうしてくれるの?」
「ああ、その件なんだけど、聡美の奴戻りたくないって。何か、男子の体が気に入ったみたいよ」
「そうなの?」
「うん」
「聡はそれでいいの?」
「聡美がいいって言うんだから仕方がない」
「……そっか。じゃあ、聡は聡美として生きてくのね?」
「そうなるわね」
「そっか」
美香は自分の席に着く。
俺は机に突っ伏した。
見た目が俺の聡美に告白か。
「坂上さん」
「うん?」
声に振り向くと三崎がいた。
「今度、俺とデートしない?」
「遠慮しとくわ」
三崎は席に戻っていった。
……。
…………。
………………。
お昼休み、俺は食堂で一人食事をしていた。
「相席いい?」
「いいですよ」
男子生徒が向かい側に座る。
彼は先輩の加賀美 健。二枚目で成績優秀な加賀美コンツェルンのお坊ちゃまである。
「坂上さんだよね?」
「はい」
「聞いたよ。いじめっ子を熨したんだってね」
「番長呼ばわりされてます」
俺は苦笑した。
「あのさ、お願いがあるんだけど、俺のボディガードになってくれない? 給料なら払うからさ」
それはいい仕事だ。
「いいですよ」
俺は即オッケーした。
「ありがとう。じゃあ、早速だけど、今日の放課後から頼むよ。それと、俺の事は健でいいからね」
「分かりました」
食べ終わった俺は食器を返却して教室へ向かう。
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