8人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は坂上 聡。都内の私立高校へ通っている。
「聡、何してんの?」
そう訊ねるのは、俺の双子の姉の聡美だ。
聡美は黒の長髪で端整な顔立ちをしている。
「早くしないと遅刻するわよ」
「うん」
俺と聡美は同じ高校に通っている。
「早くしなって」
「悪い。読者と話をしてた」
俺は鞄を手に玄関へと行く。
「何を訳の分からない事を言ってんの?」
「そんな事より行こうぜ」
俺は聡美と共に外へ出ると、ドアの鍵を施錠した。
廊下を端まで歩き、階段を下りる。
「きゃっ!」
聡美が足を踏み外して倒れ、俺はそれに巻き込まれて一緒に転げ落ちた。
「痛……」
俺は体を起こした。
「退いて」
「ああ、悪い……い!?」
俺の下に俺がいた。
「早く退いて」
俺は退いた。
もう一人の俺が起き上がって俺を見て驚く。
「何で私が二人いるの!?」
「違うよ。入れ替わっただけだよ」
「嘘でしょ!? そんな事って……!」
「でも実際起きてるし。取り敢えず、お前は俺の役を。俺は聡美を演じるからね」
「分かった」
「それより、走るぞ!」
俺達は慌てて学校へ登校した。
学校に着き、靴を履き替えた俺は、聡美と別れて、聡美の教室へ向かう。
教室に入った刹那、予鈴が鳴る。
ぎりぎりセーフだったようだ。
「聡美、おはよう」
声をかけてきたのは、聡美の親友で俺の彼女でもある飯田 美香(いいだ みか)だった。
俺は美香の耳元で言う。
「俺、聡美じゃなくて聡な」
「どういうこと?」
「聡美と階段から転げ落ちた拍子に精神が入れ替わったみたいなんだ」
「冗談。そんなバカな事があるわけないでしょ。精神科医行ってきたら?」
信じてもらえなかった。
「ホントなんだって」
「そこまで言うなら信じましょ。でも、半信半疑だからね」
キンコンカンコンとチャイムが鳴り、聡美の担任が入ってくる。
「皆、席に着け」
ホームルームが始まる。
担任が出席を取り、終わると教室を出て行った。
最初のコメントを投稿しよう!