第1話

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俺の名は、原田左之助。 昔から短気やら無鉄砲やら言われるが、中々肝の座っている性分が自慢の男だ。 そんな俺だが、今現在とても困惑している。 目の前の1人の男のせいで。 遡ること半月ほど前の事だ。 俺は元々松山藩で奉公人をしていた。中の良い友人もいたし道場での棒術の鍛錬も楽しい毎日だった。が、全てが楽しい訳でもなかった。 元凶はあの糞爺…奉公先の上司にあたる奴なんだが、何かにつけて俺に突っかかってきやがる。 目の敵にしてるってのが正直な感想だな。理由はよくわからん。知る気も無ぇし、世の中何したって相性の悪い奴だっているさ。 だから敢えて受け流していたんだが、それが逆鱗に触れたのか、図に乗ったのかは知らねぇが、あいつはとうとう言いやがった。 「腹の切り方も知らん下衆がっ!」 だと。 ガキだと言われるかもしれねぇが、俺だって男だ。馬鹿にされたまんまで流せる程懐深くなんかねぇ。 だから切ってやった。己の腹をな。
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