第1話

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パチパチ、パチパチ… しょり…しょり… あー…眠ぃ。 もう朝かぁ? パチパチ…しょり…しょり… 何だかいやに体がダルいなぁ。もうちょっと寝ててぇんだけど。あーでもそろそろ起きて支度しなけりゃまたあの糞爺に嫌味言われんだろうしなぁ。 しょり…しょり…パチパチ… いやいや、待て俺。あの糞爺のせいで藩飛び出してもう自由の身じゃねぇか。だから早起きする必要なんて… パチパチ…しょり… おい? さっきから何の音だこれ? 俺は確か都に来て山で川に落ちて、それから… 「あ」 ………え? 「生きていたのか」 ……………よし、落ち着け俺。先ずは状況整理だ。 さっきから何の音かと思ったが、パチパチってのは囲炉裏の火の音だったんだな。 んで、しょりしょりいってたのは、俺の隣の人物が出刃包丁を研いで……え? 「活け造りはまだいけそうだな。やはり鮮度が大切だし煮付けは中止しよう」 キラリと焚火に反射して光る出刃包丁。それを片手に微笑むべっぴんさん。 山姥出たああああっ!
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