19人が本棚に入れています
本棚に追加
ずざざざっとべっぴんさんから距離を取り、端っこまで逃げて初めて気付く。
俺は今の今まで布団に寝かされていた。そして見知らぬ家。
…もしかして、助けられたのか?
「何故逃げる?」
不思議そうに首を傾げるべっぴんさん。
いや、目が覚めたら出刃包丁片手に活け造りとか言われりゃ誰でも逃げんだろう!
とはいえ、もしかしたら命の恩人かもしれねぇ人にそんな暴言吐けねぇしな。
とりあえず、
「あ、あんたは?此処は何処で何で俺は此所にいるんだ?もしかして…」
「質問責めだな」
ふぅ、とため息をついて瞼を伏せるべっぴんさん。
一目見た瞬間にもべっぴん、と認識したのは間違いじゃあなかった。
黒く艶やかな長い髪。
陽の光を知らぬ白い陶磁のような肌。
切れ長の大きな瞳に縁取る長い睫毛。
整った鼻梁に薄い唇。
極上。
そう呼んでなんら遜色ない容貌。
そんなべっぴんさんが、憂いを込めたため息を吐きながら睫毛を伏せる仕草に、思わず喉がゴクリと鳴った。
ゴッ!!
が、そんな感情は出刃包丁を床に突き刺す行為に一気に吹き飛んだ。
最初のコメントを投稿しよう!