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家に着く頃には辺りは真っ暗になっていた。家の電気が付いていない事に疑問を持つ。 ギィッと軋んだ音を立てる玄関の扉を開き、暗闇に包まれた空間に立ち尽くす。温かみの無い空間が永遠に続いているような錯覚に馴れてしまった俺は、電気も付けずに家の中を歩く。 「…………?」 今まで、家に誰も居ない事は無かった。故にこの状況がどんな状況なのか、俺は予想出来なかった。 俺は洗面所へ向かい、小さな明かりを付ける。ぼんやりと光る明かりは鏡を照らし、映し出された自分の顔を見る。 暴力により傷付いた顔、痛みや哀しみを嘆く事に疲れてしまった顔。とにかく、俺自身でさえ酷い顔だと思った。 そっと鏡に映った自分の顔に触れてみる。本当の自分は今、どんな気持ちなんだろう。きっと、無情ではない。何故なら……。 「…………」 鏡の俺は涙を流していた。 俺は冷水で顔を洗い、何事も無かったかのように洗面所を立ち去った。
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