第5話 春がキタ!

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それは今から二週間前のこと。 非常階段であの劇的な告白をされて、まだ浮ついた気持ちのままオフィスに戻ると、当然の如く私達は周囲の視線を一手に引き受けていた。 同僚の田辺さんが、 「おい、永井、一体どうしたんだよ?」 と私達の前に歩み寄り、他の皆も仕事をする振りをしながら、こちらに注目していることが痛いほどに伝わってきていた。 ここできっと彼は、 『俺達は付き合うことになった』 なんて交際宣言してくれるのだろうか? とドキドキしていると、 彼は「ああ」と小さく頷き、 「相沢さん……俺が頼んだ仕事でミスをしていて、ここで注意するのもあれだから、外に出たんだ」 と低い声でそう告げた。 その言葉に田辺さんは「ああ、そうだったんだ」と納得した顔を見せ、他の皆も、 『なるほど、仕事でミスをされて、腹が立ったから勢いよく通路に連れて行ったわけだ。 このオフィスで皆の前で怒鳴るのは、さすがに可哀相だものね』 と一寸の疑いもなく『うんうん』と頷いていた。 私は彼の言葉に少し戸惑い、 どうして? と見上げると、その気持ちを察したのか、 「面倒だろ?」 と一言そう漏らし、何事もなかったかのように自分のデスクについた。
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