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『何それ?私たち、ただの痴話喧嘩に巻き込まれてただけってこと?』
『知らないわよ、あんたたちが勝手にイジメを盛り上げておいて、全部私のせいにしないでよ。』
山瀬と甲斐の言い合いは続いた。時々、水木が甲斐側についたり山瀬側についたりしながら意見している。
みんな、表面的には謝ってはいるように見えるが、自己防衛の弁解をしているだけだ。水木と山瀬は甲斐のせいにし、甲斐は嶋田自身に原因があると言い。
イジメを見て見ぬ振りをするのはいじめている人間と同罪だ。
が、気づかなかった自分はどうなのだろう。
俺はクラスメイトに無関心すぎて気がつかなかった。気づいたとしても、何かしただろうか。田代さんが現れたから、俺はこの件に首をつっこむことになったが、そうでなければ…
人が一人死んでいる。
たまたま田代さんの脳を移植された肉体が残っているだけで、嶋田朱璃自身はもうこの世にはいない。おそらく。
自分たちがやったことの結果なのに、なんだこのザマは?
嶋田の書き残した日記を読んだ時には感じなかったが、3人の話している内容は、充分に人の心を崩壊させ死へ追い詰める要素を含んでいる。
結局、命を引き換えにしても、当事者たちに罪の意識を残すことなどできないのだ。
そう思いながらも、一言も発言できない俺。
そして、嶋田も何も言わない。
一点を見つめ、ただ、じーっと耳を傾けているようだった。
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