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『朱璃はきっと、もっと生きたかったと思う。死にたかったのは私の方。なのに、私だけが残ってしまった。』
『どういうこと?』
『朱璃の脳には腫瘍があった。学校に行けなくなったのは、もう限界だったから。』
腫瘍?そうか!
『もしかして、性格が突然変わったのは、腫瘍のせい?』
俺は嶋田とその後ろにいる越川さんを見て同意を求めた。
『可能性はあるわね』
越川さんが言った。
嶋田は答えず、自分の話を続けた。
『あれから2年以上生きられたのは、アイツが気づいて色々と処置をしたから。でも、完治させる術はなくて。アイツの腕でもどうにもできない場所だったから。朱璃は薬漬けになり、ただ、生きているだけの状態にまで追いやられた。』
『そんな…』
山瀬の小さな声が聞こえた。みんなそれぞれに何か思うことはあるだろうが、静かに嶋田の話を聞き続けた。
『あの日。【もう、たくさん。私は消えよう。生まれ変わったら私の知らない 私になろう】と日記の最後のページに書いた。朱璃は薬を飲むのをやめた「ごめん、もう疲れた」って。それを見たアイツは自分の部屋に閉じこもって。半日経って、飲むようにと渡されたのは、いつもと違う薬だった。これで終われると悟った。朱璃は自分が脳腫瘍で死んだとなると、父親の経歴に傷がつくと思ったから、薬を飲む前に言ったの。「イジメで自殺したってことにしたら、ママはきっと急いで帰ってきてくれるよ。引き出しの中の日記…ママに渡して。パパ…今日までありがとう」って。…あのまま、私たちは静かに終わるはずだった。』
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