57人が本棚に入れています
本棚に追加
それだけ言い終わると、嶋田は意識をなくしベッドへ倒れこんだ。
『朱璃…病気だったの?』
甲斐が言った。
『そうみたいね。』
答える越川さん。
『あんなに元気だったじゃん。病気だって知っていたら、あんなことしなかった…性格変わる病気があるなんて、こっちは知らないよ、そんなこと!』
『俺たち仲良かったのに、何で言ってくれなかったんだよ。』
甲斐と水木は泣き出した。
性格が変わる病気になったわけではないが、そこではあえて訂正はしなかった。
『私たち、病気で苦しんでいる人に、あんな酷い仕打ちをしていたってこと…?』
山瀬は少し考えて言った。おそらく、病人という弱いものを攻撃していたということを彼女の正義感が許さないのだろう。
『でも、今の言葉が本当だとは限らないよね。だって、脳は田代さんって人でしょ。あの人だっていくらでも演技できるんだし。体に残った記憶なんていって怪しいもんだわ。』
その言葉に越川さんは完全に呆れていた。
『確かに。本当のことを知っているのは嶋田さんのお父さんだけでしょうね。嶋田さんが死のうとした原因は病気と闘うのに疲れたからで、あなたたちのイジメのせいではなかったのかもしれない。病気のおかげでイジメに対して辛いと感じていなかったかもしれない。だけど、だからと言ってあなたたちがやったことがなくなるわけでも、罪が軽くなるわけでもないの。あなたたちは、いろいろ理由をつけて自分をただ正当化しようとしている。私は、…さっきからそれに腹が立って仕方がない!!』
俺たちはいつも自分のことで精一杯だ。
越川さんは正しいことを言っているが、この言葉がここにいる俺たちの胸に刺さったかどうかは疑わしい。
最初のコメントを投稿しよう!