20章:愛するもの

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『レオン様、惑わされないでください』  レオンの心に届いた声は、もう一度そう発した。  薄紅色の光がレオンを包む。 「レオン様!! 聞いてはなりません! 私を見て、レオン様!!」  エミリアが叫ぶ。が、レオンは瞳を閉じて光に体を預けていた。  惑わす?  ……惑わす? 何処かで…… 『レオン殿、惑わされずにな?』  ああ、豊王が言っていたな。  俺は……惑わされているのか? 『レオン様の愛するものは、レオン様が知っているものです。レオン様が知っているものは、ここに居ますか?』  薔薇の声がレオンに問うのだ。 『ここに愛するものは、居ますか?』  と。 「レオン様!! 皆が幸せになるのは、私を連れて帰ることよ! レオン様! あなたの愛するものは、私でしょ!!」  レオンの耳に聴こえる金切り声。  エミリアが歪んだ形相でレオンに向かって叫んでいた。 .
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