20章:愛するもの

10/14
440人が本棚に入れています
本棚に追加
/475ページ
 その加速がレオンを息苦しくさせた。  レオンの両膝は地面につく。両手は固く握られ、その地面を強く押していた。瞳には何もいれまいと、視線は地面に固定される。  自身の荒い息づかいが、心と同調した。否、心が息づかいに現れたのだ。 「っ……」  レオンは声を失う。出せる答えが見つからない。 『何を願う?』  主の声がまた落とされる。 『どちらの目覚めを願う?』  ーーサラサラーー  風の囁きのみ。  留まる者の時は、時とは言わない。長く、短く、過ぎていく。  そして、  無情にも主の声はレオンに降りかかる。 『……アイラは我が引き取ろう。この森で、目覚め平穏に暮らすことを約束しようではないか。三宝を持つアイラは我が娘であるからの。 おぬしは、エミリアを連れて帰れば良い。それで皆が幸せになる。エミリアもエミリアの父も、失ったものが戻ったおぬしも。親友が戻ったシェリーも。三宝のことでもう悩むことがなくなる涼の国も。 三年前に戻るだけである。止まっていたおぬしらの時がこれで動くのじゃ』 .
/475ページ

最初のコメントを投稿しよう!