20章:愛するもの

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「レオン様、主様の言う通りです。これで、私達は幸せに暮らせますね。そのヒトは主様が幸せにしてくれますもの。心置きなく出立いたしましょ」  エミリアが再度レオンに体を寄せる。  レオンの思考は真っ暗な闇に落とされた。  なぜ?  わからない。  苦しい。  俺は……  頭が混乱する。  俺は……   『苦しまずとも良い。我の言葉を受け入れよ』  締め付けられているレオンの心に、主の言葉がストンと落ち、 『おぬしが決めたことでない。我が決めたことだ。おぬしが苦しむことはこれでないのだ』  広がっていく。  主の言葉がレオンを支配していく。 「俺は……エミ、リ、アと……」  レオンの声が紡がれる。 「……一緒に、かえ……」  ……  ……  止まる。言葉は寸でで止まる。 『レオン様、惑わされないでください』  レオンの心に語りかけるその声は、  薔薇の声 .
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