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俺は国外への逃亡を謀ったが、国がそれを許さなかった。
俺が逃げればユーリアは必ず俺の後を追う。
国王はそれを恐れたのだ。
ユーリアの素晴らしい才能は軍事的にも非常に重要な物となっていた。
生かさず殺さずユーリアに悟られることの無いように、俺はじっくりと追い詰められて行った。
そして俺は……決意した。
「ゴメン、俺はもう生きていくのが辛いんだ」
俺は遺書ではなく怨書と呼べる代物を作成した。
俺を追い詰めた人間の名前を一人ずつ書き連ねていき、最後にはもちろんユーリアの名前も書く。
そしてユーリアに関してはじっくり二枚分、ユーリアのせいで俺の人生は滅茶苦茶になったことを書いた。
意外と好きな人物でもこれだけ文句が出るものだな。
だけど最後の方はなんかお小言みたいになり、最終的にお前の事が好きだったと書いてしまった。
インクで塗りつぶし、お前の事が大嫌いだったと書き直す。
これで準備は出来た。
おそらくユーリアが本気で探せば一日も掛からず俺を見つけ出すだろう。
そして、即死じゃなければユーリアの驚異的な蘇生魔法で助かってしまう。
心臓を剣で刺すことすら生温い。
もっと確実な死でなければ……
俺は聖域と呼ばれる山へ向かった。
「……自殺は歓迎か」
山の中腹にある神殿には誰一人居らず、その中で神炎と呼ばれる紅蓮の炎が台座の上で赤々と燃えていた。
幸いユーリアには感づかれてはいないようで、邪魔が入る気配はない。
俺は台座の上に登り、聖なる焔に身を預けた。
これで……終わる筈だった。
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