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どうやら俺は死ねなかったらしい。
目を開けると何処かの雪山に倒れているらしく、柔らかな雪に半分身体が埋まっていた。
「我は自由だー!!」
そして俺の近くでは大勝利したかのようなポーズで叫ぶ、紅蓮の髪を持った美しい女性がいた。
「……」
「おお!目覚めたか我が眷族よ!」
幸い、神炎の中での出来事は覚えている。
炎の中で聞こえてきた声、そして神殿に祀られている神の名は……
「神龍イフリス!」
「うむ、我こそは神龍イフリスだ」
どうして死ねる時に限って邪魔が入るのだろうか?
疲れた。
死にたい。
「どうだ?我が眷族として生まれ変わった気分は?」
「……最悪だ。どうして助けた!俺はやっと死ぬ覚悟をしたってのに……」
自殺をするのだって勇気はいる。
「ああ、気にするな。死ぬという目標は達成された」
どういう意味だ?
俺は今ここで確かに息をしている。
死んだ訳がない。
「肉体を材料に新たな肉体を作り出した。その過程で死と定義される状態にはなったのだ。つまり、お前は生き返ったのだ。我が眷族としてな!」
龍の眷族と言うからには俺の身体の至る所に赤い鱗らしき物があり、爪は硬く刃物のようだ。
「……残念だが俺の死の定義はこの世から消えることだ!」
俺は鋭い爪を喉元へ突き立てるが、鱗が邪魔をして爪が上手く突き刺さらない。
「はぁ……使いたくはなかったが致し方ない。“自殺を禁じる”!」
「!!」
俺の手は何者かに操られたかのように、さっきまで行っていた行動を止めてしまった。
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