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「タケル君、泣きすぎ」
「うぅっ、スミマセン……」
まるで母親が子供を見守るみたいに、カンナさんは俺を微笑みで包み込んでいてくれているのだろう。いつもみたいに。
「二つ目は……カンナ、来てくれたんだろう?」
観客席がざわつく。
知っている者は知っている、暗黙の了解の存在であるシタラ☆アキラの恋人。
「アキラ……」
袖裏にいるカンナさんが小さく呟く。舞台上のアキラさんは、一直線にカンナさんを見ている。
「来いよ」
あのドヤ顔で、愛しい人を見つめる眼差しで。
「いい、のかな……アタシで……」
自信に満ちあふれ、大人の女だったカンナさんが、急速に不安げ女の子になっていく。
カンナさんの背中を押すように、俺は力強く頷く。
「ありがとう……タケル君。アタシ……行って来る!」
俺の初恋は出会った時から失恋確定だった。
カンナさん。どうか……どうか……幸せに。
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