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俺にも家族がいる。たった一人の妹だ。
芸人になって10年、ずっと応援してくれていた。最後まで俺の好きにさせてくれた。
『私、お兄ちゃんの笑いのセンス、大好きだよ!』
『ずうっと応援してる! 私がファン第一号なんだから!』
屈託なく笑う妹の気持ちが嬉しくて、男泣きしたものだ。そんな妹は生まれ故郷で看護師をしている。
『私には東京、合わなかった。向こうで頑張る』
でも俺は知らなかった。妹の親友から聞いて初めて自分の愚かさに気付いた。
妹は……俺のせいで結婚出来なくなったのだ。
互いを思いやれば思いやる程、隔たりを覚えた。遠くに感じたのは決して距離のせいだけではなかった。
だが地球最期の日が近付き、俺は妹に初めての、そして最後の手紙を送った。
『ヒカル、俺の最期の舞台、見に来てくれ』と。
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