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「俺もお前に会えてよかったよ」
アキラさんからのもったいない言葉に、俺の涙腺は崩壊しそうになる。
「優秀な女優かよ! 泣くな!」
「うっす……スイマセン……」
鼻をすすると今までの事がいろいろと思い出され、切なくなる。
「なぁ、タケル」
「ハイ、アキラさん」
アキラさんは、今一番人気のコンビ芸人を眩しそうに見つめる。
堂々と舞台に立つ彼らの名は【珈琲牛乳】。七色に輝くミラーボールの下、観客の心を鷲掴みにする巧みな話術が秀逸だ。
加えてイケメンのトオルとシンジは女性ファンも多く、この劇場のそれまでの出待ち記録を塗り替えたのは記憶に新しい所だ。
「アイツら……面白いよなぁ」
しみじみと、しかし何故か寂しそうにアキラさんは呟く。
後輩を褒められ、嬉しい気持ちと悔しい気持ちがない交ぜになった。だが俺は、「はい」とアキラさんに返した。
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