霧乃

40/58
前へ
/162ページ
次へ
 霧乃は再び蛇腹剣状態の勾陣を召喚。右腕に嵌めこみ前へと出ようとする。その後ろで千星空が新たな霊術を紡いだ。 「群れを成して喰らい掛かれ――オオカメ式!!」  バラバラと宙に散るのは獣を象った幣だ。真っ黒な毛に包まれた牛のようにデカい狼。だが、それも目の前の高田王子に比べると子犬のようだ。千星空の霊力を受けて出現したのは十頭程。五頭で一組、二体の高田王子へと襲い掛かる。持ち前の機動性を生かして高田王子を翻弄している。 「兄様、今の内に!!」  千星空が叫ぶ。式神、式王子、護法童子――呼び名は霊術の派によって変わるが――がいくら強力であろうと、司令塔たる術者の方を倒せば、終わる。見る限り高田王子は自律性のある式神のようには見えない。 ――ま、でも強い事に変わりは無い。  千星空は持ち前の霊力の高さを利用して、複数の式王子を操っている。錫杖を両手で拝むように携えて集中していた。その制御力の高さは目を瞠るものがあるが、彼女自身の戦闘経験はこれが殆ど初めてと言っていい。式王子を破られて、接近されたら勝ち目はない。 「勾陣、千星空を守れ」 「あいよ」  霧乃の腕を離れ、するすると飛ぶように伸びて行く勾陣。千星空が驚く声が聞こえたが、霧乃はそちらには目もくれず、誘へと向かう。
/162ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加