霧乃

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――それでも、お友達となるべきです。自分の事情を話してしまえるほどの仲に。  そんな事が果たして出来るだろうかと、霧乃は思う。妹にさえ自分の事情を全て話せてるわけでもないのに。それを他人そして陰陽師でもない、何の力も無い人間に話せるだろうか。 ――大丈夫です。腹を割って話せる位の仲になれば、たとえ隠し事があってもそれだけで、信頼の糸が切れる事はありません。いえ、切れさせないようにお兄様は努力なさればいいのです。  千星空の言葉は抜き身の日本刀のように鋭く、そして容赦が無かった。 ――騙されれば、恐らくその方は怒るでしょう。疑いも持つ。けど、お兄様は決してその方を傷つける側に回らないと決意すればよいのです。  その言葉の刃は、霧乃が長年築いてきた心の殻に亀裂を齎した。 ――大丈夫。お兄様はなんだかんだ言いつつも、私を守ってくださったじゃないですか! それと同じ要領でやればよろしいのです。  あどけない、疑うという事を知らない無邪気な笑顔だった。それはある種の呪として、霧乃に働きかけていた。 ――真実。俺が、俺であると確かに感じられるようになる為の……。  自分の言葉にすら自信が無くなる、そんな呪縛から自らを解き放つ。霧乃は義妹の前で誓った。 「俺が俺らしくある為に、ね」  見上げる空は、これから起こる事を暗示するかのように晴れやかだった。『なんとなく』ではない。必ず成功させてみせる。それを信じ、霧乃は歩き続ける。 ――そして、彼らが会う時は来る。
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