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「てか、火龍!! てめぇ、なんであいつが出て行くのを見逃したッ!?」
「オイオイ、命の大恩人様に、それはねぇだろうよ」
――大恩人様? ふと、長倉が首を傾げた。朝霞はぷるぷると震えながら、火龍を指さした。
「うっせぇ!! お、お前、自分が十二天将の式神使いの一人だからって何しても許されるとか思ってんじゃねーの? んな小学生思考、シャカイじゃ通用しねーぞ!!」
「そーですね」長倉がボソリと呟く。ギリッと朝霞は白々しい顔の部下を睨む。
「な、何だよ!! おっさんもおかしいと思わないのか!? こいつ、すんげぇ危険な奴をわざと逃したんだぞ!」
長倉もその点については不審だった。「いつものこと」で片づけられるような事ではない。あれが世に解き放たれればどのような災厄を齎す事になるのか、想像もつかない。
だが、同時に火龍がここに来た目的は、あの式神を解き放つ事だったのではないかとも思う。何のために、か。いや、それを聞く事には何の意味も無い。
「あいつがどこに行ったか分かってるのかい?」
「あぁ。あの様子じゃ何日で着けるか、目的地に辿りつけるかどうかもわかんねぇがな」
少女はパニックを起こしていたし、そもそも目的地があったとして、道が分かるのかどうかも怪しい。明確な目的地、それは影夜が成し遂げようとして出来なかった事をする為か。
「まさか……」
だが、火龍は不愉快そうに笑い飛ばした。
「お前の“まさか”は俺の考えている事の半分位しか当たってねぇだろう」
何が言いたいと長倉は眉を潜める。彼にしてみれば居場所さえ分かればいい。理由等捕まえてから問いただせばいいだけの話だ。
「そんでもまぁ、場所は教えておいてやるよ――栃煌神社だ」
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