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†††  妻が消えてから一週間、私が途方に暮れていたのは間違いない。目に見えないところでは、霊力の衰え、はっきりと分かるところでは、生活の乱れ。特に料理の面では、何日も同じ品目が続いた。  娘は、自分自身が一番辛いにも関わらず、私を案じてくれた。朝食と夕食は自分が作ると、そう言ってくれたのだ。幼い頃に彼女は、祖母から基本的な料理を幾つか学んでいた。  料理を作ると娘が言ってくれた時、私は、純粋に嬉しかった。ただ、そのせいで一つ失念していた。  彼女が祖母から学んだ基本的な料理は全部卵料理だったことに。
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