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††† 「準備でーきた……」  電球の薄明かりの下、春日月はひとりごち、薄らと笑みを浮かべた。それは、吹雪の中で微笑む雪女のように怖気を感じさせる笑みだった。台所には、幾つもの殻が転がっていた。ボウルの中には、既に何個も落とされた黄身が置かれている。それを愛おしそうに、見つめる。  そして―― 「絶対に、今度こそは……」  寒気の中に熱気の篭った声が決意を顕にした。 「………………………」  そして、彼女の式神である日向は、それをどこか年下の子どもの面倒を頼まれた高校生のように、見守るのであった。
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