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世界は陰と陽、二つの世界により成り立っている。形あるものが存在する陽の界。形無き物が存在する陰の界。陰陽の気が乱れる時、邪を糧に育つ物の怪が生まれる。
それを滅し、陰陽の調和を保つのが、陰陽師である。
彼らの多くは、一般人の目の届かないところで、修行を積む。神社や寺で弟子入りし、一人の陰陽師を師として、他の様々な陰陽師からも霊気を操る術――霊術を学ぶ。
沖一真も、またその一人だった。
「体の内側に集中しろ」
師である鬼一頑徹の言葉が、頭に響く。集中しすぎて、血管が破裂してしまいそうな頭の中に。
「やってます……よっと」
一真は霊符を片手に持ち、正座していた。手に持った霊符に霊気を込めようとしているのだが、上手くいかない。
「やってみるのではなく、やるんだ……五臓、身体の中にある五行を循環させ、霊符に霊気を込める。これが基本だ」
「五臓から五行って……それが出来なくて困ってるんですけど」
一真は静かにぼやいた。もう、かれこれ一時間が経過しようとしている。鬼一は昔から、剣道でも他のことにおいても、時間を掛けて教える主義を持っている。一つの技をしっかりと覚えるまで解放してはもらえない。それは分かっていたことだが、流石に長すぎる。
「すみません…・…無理です」と、一真は霊符を手放した。流石の鬼一も、これ以上は成果は出ないと思ったのか、嘆息し、教えるのを止めた。
「お前は、素質自体は悪くない。が、あまりにも霊気の操作が不得意だ」
「はい……確かに」と、一真は項垂れた。本音では愚痴りたいところだが、それをすれば説教が返ってくることを、経験から知っている。
――ほんと、師匠のご機嫌の伺いだけ上達してくよな。
自虐的な思いがついつい浮かんでくる。
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