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元々、一真は霊剣破敵之剣を通して、霊術を使用してきた。今でこそ、基礎的な防護術である身固めが使えるものの、霊力を体の外に放出する「遠隔力場」と呼ばれる術は殆ど使えないのが現状だ。
――無駄に気力だけ消費しちまうんだよな、おまけに。
犬の唸り声のような音が腹から響いた。一時間正座していたので、足もいい加減痺れてきた。
元々剣道部で正座は慣れていたが、流石に時間が長すぎた。
――霊気を変換しようとはしているらしいんだけどな……。
その過程が上手くいかない。歯車の合わない機械のように。ただただ、燃料だけを消費し空転する飛行機のように。
「てか、もう12時かぁ……余計、腹減るよなぁ」
今日は休日で、父、雅彦も母、愛乃(よしの)もいる。父はパイロットで母は福祉関係の仕事をしている。どちらも忙しい……というよりも、特殊な業務なので、中々家族揃っての休日というものが取れなかったりする。一真の父はパイロットで、海外へも飛ぶ。休日は時差ボケを直すために寝ていることが多かった。
「てか、今日家で食べるかこっちで食べるか、言ってないな……」
鍛錬の後は、神社の方で昼食を食べるのが最近の日課となっていた。両親も妹も意外とマイペースな性格なので、それで済んでいるのだが、流石に家族全員が揃う状況で、外で食べるのは躊躇われた。
鬼一は既に道場を出ていた。栃煌神社には、小さいながらも剣道場が宿坊の隣にある。ただ、鬼一は栃煌神社の人間ではない。鬼一法眼と言う伝説上の剣術家の子孫、霊術と剣術の融合した霊剣術――京八流、そして霊術を用いた集団戦法が記された戦術書六韜を受け継ぐ男である。
――正直、話だけ聞くとまるで実感が湧かないってか……御伽噺の中の話みたいだよな……ってまぁ、それを言いだしたら、陰陽師の存在自体がアレなんだけども。
「なに、ぶつぶつ言ってんの?」
「ほわっ!?」
ひょこりと、隣に現れた赤毛の少女に一真は横に仰け反った。あまりにも面白い格好だったのか、日向がクスクス笑っている。
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