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「あのな……いつもいつも、お前はどうして、突然現れるんだ」 「いーじゃん、近づいてたのに気がつかなかったのが悪いんだよー」  一真の苦言にも、日向はあっけからんとした様子で、受け流した。いつものやり取りであり、言うだけ無駄だとわかっていながらも、言わずにはいられなかった。 ――まぁ……、本物の陰陽師だったら、日向がこっそり近づいてきても、気づくんだろうけど。 「で、何しに来たんだ?」 「えー、何も用なきゃ来ちゃいけないの?」 「……あのな」  話が進まないので、無視して道場を出ようとして、何かにぶつかった。 「ほわっ!?」  本日二回目の叫び声もとい奇声。崩れてきたのは重箱だった。反射的にキャッチ。 「……なんだ、これ?」 「あちゃー」とこれは、日向。なんだか、よく分からないが嫌な予感がしてきた。玉手箱の塔……その裏側にいたのは、月だ。 「あ、一真」 「これ……」となぜか、中身を見なくても分かる。いや、なぜかではない。経験上で知っていること……経験というのもおこがましい、日常的なというか、この少女にしてみれば、魚を見たら飛びつかずにはいられない猫の性のようなものというかなんというか。 「なに、ぶつぶつ言ってんの? 一真」 「……最近、独り言多くてな」  なんだか疲れて頭がくらくらしてきている。一真ははぁっとため息を吐き出しつつ、それでも一応聞いてみた。 「で、これは?」 「ん。……勿論」と、月の瞳の奥底が怪しく光った気がした。ぎくりと、何故かその中身がなんであるか大方の予想が付いているにも関わらず、一真は仰け反った。 「料理……。ちょっと、その、料理の研究を“二日間”掛けてやってみたんだけど」 「……けど?」 「作りすぎちゃった」 ――見れば分かる。  重箱が五つも六つもあるのは、月にしてみれば珍しいことではない。どうせ、中身は卵焼きなのだろう。 「ごめん、運びきれなくて」 「そうかそうか……」と、相手が小学生だったら、頭でも撫でそうな一真の口調に、月は俯いた。普段、あれ程、後先考えずに料理(卵料理)を作り出す彼女が後悔している。一体、どれだけ作ったのだろうと、背後を見て……一真は絶句した。 「え?」
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