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『いや、そんな物よりも、もっと偉大な繋がりを築けるとも』
私達は家族なのかと訊ねた彩弓に、影夜はそう言い放った。彩弓は、よく分からないままに気持ちが高揚したのを覚えている。だが。
――そもそも、家族が何なのか分かってないのに
それ以上もそれ以下もどうやって判断するつもりだったのだろうと、その時の自分に質問してやりたい気分だ。
「彩弓、大丈夫?」
「え、わひゃ!?」
ぐんと碧の顔が近づき、彩弓は思わず仰け反った。舞香がその後ろから近付いてきて茶化すように笑う。
「あ、もしかして。さっきの姉ちゃん特製の首関節決め掛けられるんじゃないかって心配してるとか?」
「え、えっと、そんなことは……」
「ふ、大丈夫。あれを掛けるのはお仕置きの時だけ。つまりは、悪い子にだけよ」
がびんと舞香がその隣で固まる。
「え、え、それ、なんかうちにいる子で、悪い子は私しかいないみたいに聞こえるんだけど!?」
「そうよ?」
にべも無く言われて舞香はその場に崩れ去った。彩弓は慌てて立ち上がり、二人の間に割って入った。舞香の肩を揺さぶりつつ、碧に喰って掛かる。
「な、なんてことを言うの――!」
一瞬、碧が面喰ったように目を点にし、それから大声で笑い出した。彩弓は背筋が凍るような思いで舞香の方に向き直る。肩が震えていた。彩弓は今にも泣き出しそうな顔で揺する。
――どうしよう、このままじゃ……
今まで幾つも家族を見て来た。その中で、些細な言葉一つで関係が崩れる様を何度も目の当たりにしてきた。影夜の手から逃れ、ようやく本当の意味で家族になれそうな人達を失いたくはない。
「ま、舞香お姉ちゃん……その、碧お姉ちゃんは……!」
「あははははは!! もう、彩弓は可愛いなぁ!」
「ふへ!? ンギャー!!」
身体を引き寄せられ思いっきり抱きしめられる。
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