63人が本棚に入れています
本棚に追加
「え、でも、それが普通なんじゃ」と一真が疑問を投げかけるが、真二はハッと失笑した。
「考えてもみろ。彩弓が攫われても警察に通報すらしなかった連中だ。この子の事を本気で心配なんかしてない“家族”が、何を今更主張するって言うのか」
「改心した……とか?」
「その可能性は考慮しておこうとは思うけどなぁ。あの“家族”の形態見る限り、望みは薄いと思う」
家族の形態? と彩弓は首を傾げる。家族にとって“血が繋がっている”というのはそんなに重要な事なのだろうか。
「しかし、まぁ世の中色々な家族があったもんだ」と皮肉たっぷりに真二は吐き捨てた。
「“芦屋ファミリー”かの安倍晴明と並び称される程有名な芦屋道満の“家族”だと主張する暴力団グループねぇ。一体、何が出てくるのか今から震えてしまうぜ」
「あしやどーまんて……」
単調な言葉で、月がその言葉を繰り返した。聞き間違いじゃないか確認するように。そして、それは聞き間違いではなかった。
「あぁ。あの芦屋道満、だ。その子孫だと主張している連中なんだが。全く、わけわかんねーよなぁ。今日日、これ程センスも捻りも無いようなグループがあったもんかよって俺も笑いたくなるが、そいつら勢力としてはそれなりらしいんだ。そこのボスから呼び出しがあってな。娘の事で話がしたいってよ」
「それ、罠なんじゃ……」と一真は暴力団というそのイメージのままに、予測した。真二はまぁなと溜息を吐く。
「一人で来いってのと、指定された場所がなぁ、いかにも人を密かに殺せそうな場所でよ」
「お父さん、それ危険だよ!!」
「そ、そうよ! なんで、そんな罠って分かり切ってるようなとこに!」
舞香と碧が本気で喰って掛かっているそのことに、彩弓は目を丸くする。さっきまであんなにふざけていたというのに。対する真二は笑いつつも、真剣な目で二人を見た。
最初のコメントを投稿しよう!