彩弓

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「あ、本当だ」 「え、何々、どうしたの?」  一真と舞香は無警戒にその音をなんだろうかと推測し合っている。だが、月とそして彼女の式神は違った。彼女は月の前に具現しつつ、焔の扇を右手に構えた。 「影夜はまるで懲りない奴だねぇ。式神なんか送ってきちゃって」 「何!?」  その一言で一真と舞香は弾かれるように立ち上がった。さりげない動作で碧が彩弓を自分の背の後ろに隠す。 「いや、でも、これは影夜が放ったわけじゃない、のかな?」ちょっと自信の無さそうな日向の声に、一真が肩を落とした。 「おい、それはどういう事だ……いや、それよりも、危険なのか、危険じゃないのか、どっちなんだ」 「怯えてる」  全員の視線が彩弓に引き寄せられた。 「すごく、怯えてるんだと思う、その子」  すっとまるで透視でもしているかのように、彩弓の視線は迷うことなく、鈴の音の元を当てた。また、その視線を向けられた方も途端に、何か視線を受ける受信装置でもあるのか、ひゃっと声を出して反応した。 「あなたは誰? なんで、彩弓の心の中に入って来るの?」  彩弓の大きく見開かれた瞳にその少女が映し出される。 「お、お初にお目に掛かります。私、中原家にお仕えしております、鈴が付喪の鈴彦姫(すずひこひめ)と申します!」  ミズナの大木の陰から出て、平伏する少女。目を引くのはその恰好と容姿、白拍子だ。頭に被ったのは烏帽子ではない。鈴だった。鈴が大量に括り付けられている。その髪は青っぽい銀色で地面に届くほど長い。少女は、平伏しつつも、しっかりと顔は上げている。前髪は額の辺りで切り揃えられており、どこか日本人形を彷彿とさせるほどに整っていた。
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