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「あなたの隠形はあまりにもぬるい」
「破ったのは中々の腕前と褒めてやるよ。これでようやく腑に落ちる。お前達は霊術者――、なのだろう?」
道満の子孫であると標榜する芦屋ファミリー。その実態は単なるオカルト集団では無かった。霊術を半端に齧ったことにより、「自分達は他の誰にも到達しえない高みに達したのだ」という思想を抱いてしまった集団だ。耐性が全く出来ていない者にとっては無理も無い話だ。それだけなら、多少同情もするのだが。
「そして、彩弓の両親、父親が所属していた暴力団を呪詛で殺した」
彩弓を連れて来なかった最大の理由だった。確信は持てなかったのだが、この選択に間違いは無かったようだ。
「おや、何の証拠あって?」
「俺達の仲間の中には警察組織の中に入り込んでいる奴もいるんだよ。父親は屠龍組の頭領だったが、内部抗争で死んだ。その情報から調べをそいつに進めて貰った結果、この事件には奇妙な点が多くてな。まず、彩弓の父親は毒殺された事になっているが、凶器たる毒物らしき物は見つかっていない。そして、確認できた限りでは派閥の連中が全員死亡しているという事。全員毒物で死んでいる。集団食中毒の線も疑われたらしいが、ほぼ即死だった事からやはり毒物であろうという事になった」
一気に捲し立てあげ、ふうと真二は息を吐いた。
「ボスとその周辺の奴を毒を盛って抹殺し組織を乗っ取ろうとした裏切り者が、誤って自分もその毒を飲んでしまった――とかいう間抜けな落ちだったら、良かったんだけどな。凶器たる毒は何処からも検出されなかったらしいんだ。こうなると内部抗争だったのかどうかって線も疑わしくなるが」
「迷宮入りですか。その事件は」あくまでにこやかに対応する青年。その高慢ちきな鼻をへし折ってやりたい衝動に駆られつつも、真二は話を続ける。
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