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現陰陽寮“化生討滅士部門”ト組、通称――早乙女隊は、中原邸内部の家宅捜査に追われていた。
隊長は八乙女朝霞(やおとめあさか)“神憑りの踊り手”の名で同業者からは畏怖されている。
欠伸を噛み殺し、部下に捜索させる傍ら、自身も適当に家具を漁っていた。あまり、身が入っているとは言えない。
千早・水干・緋袴・白足袋に身を包み、首から下げがるのは金襴(きんらん)の掛守(かけまもり)、金箔(きんぱく)を施したヒョウタン、そして朱色の柄の太刀を腰に佩いている。頭には鉢巻、黒くサバサバとした髪は結ばれており、その細く鋭い目と相まって鷹を思わせた。
ただ、何よりも目立つのは、その恰好のせいではない。
「おい、お前ら……、なーんも見つけられなかったのかよ」
ぼそりと、部下の誰とも視線を合わさないまま吐き出される小言。これで何回目だろうと、彼女の元についている陰陽師達は思った。皆、狩衣姿で、腰には小太刀を差し、袖裏には呪符を隠し持つ。陰陽師としての標準装備で固められていた。各々の能力は、個性的ではあるのだが、集団戦を重視してのことだ。
集団戦では、個人個人の力よりも、まとまった上での力が求められる。
ただ、違うのは朝霞のみ。彼女は集団に合わせるには、あまりに突出した存在だった。
「隊長さんよ、あんただって何も見つけられていないだろう?」
そう言ったのは、陰陽師達の中でも一番年配の男だった。実戦豊富で貫録もあり、何も知らない者に、彼が隊長であると言えば、疑いもなくそうなんだと信じるところであろう。
だがそれでも、隊長の朝霞に、この男は決して適わない。たとえ――、
「うっさいなーおっさん。私、成長期だよ? ホントなら寝てるとこだよ? なのに、こんな所まで引っ張りまわされてさー、ホント嫌になるよねー」
そう、彼女はまだ子どもだった。中学一年生。ついこの前まで小学生をやっていたような少女がこの隊を仕切る長なのだ。
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