63人が本棚に入れています
本棚に追加
神楽鈴が銀色の光に包まれ、咄嗟に朝霞は手放した。鈴は落ちる事無く宙に浮かんだまま光を放ち続け、視界を白で埋め尽くしていく……と、それが唐突にパッと散った。朝霞は咄嗟に結界を張ったものの、それは攻撃による光ではない。
「あ”?」
朝霞は元々細い瞳をより一層細めて、それを見た。一瞬、それが何のか分からずに身構えてしまったが、まじまじと見て朝霞は、顔をしかめた。
少女だった。頭に何やら鈴を沢山くっつけた少女。髪は青っぽい銀色で、驚いたことに足元に届く程に長い。顔は見えなかった。というのも、彼女は深く平伏していたからだ。髪がすっかり顔どころか細い身体をも包み込んでしまっている。僅かに見える指先は日本人形のように整えられており、美しい。
実際に立たせてみないと分からないが、恐らく朝霞よりも幼いだろう。少女は震えていた。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんさい」
「コワイよ!!」
思わず、その頭についている鈴を蹴り飛ばした。少女がドスン!! と暴力的な音を立てて後ろに倒れた。はっ、と朝霞は顔を強張らせた。反射的に蹴っ飛ばしてしまったが、まさかこんなに弱っちいとは思わなかった。
「あぁ、あぁ……」と火龍が面白げに煽る。
「え、何!? 今の私が悪いの? ねェ!?」と咄嗟に長倉の顔を見るが、長倉は気まずそうに、視線を逸らした。他の隊士達も「あぁ、やっちまった」という顔だ。
「な、なんだよぉ! って、お前、大丈夫か?!」
少女はゆらりと身体を起こした。その顔に、朝霞は思わずハッとなる。影の掛かった白い肌は舞い散る雪のようで、今にも崩れ去りそうな儚さを持っていた。池に張った氷のような透明感を放つ瞳が、朝霞を捉える。
最初のコメントを投稿しよう!