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「燃炎不動明王、火炎不動王、波切不動王、大山不動王、吟伽羅不動王、吉祥妙不動王、天竺不動王、天竺逆山不動王。逆(かや)しにおこなうぞ。逆しに行いろせば、向こうは血花に咲かすぞ。味塵と破れや、そわか」
千星空を中心として円状に青白い燐光が走る。靄の触手がそれに触れた途端、静電気に当たったかのように、仰け反る。
「もえゆけ、絶えゆけ、枯れゆけ。生霊、狗神、猿神、水官、長縄、飛火、変火。
その身の胸元、四方、さんざら、味塵と乱れや、そわか。向こうは知るまい。こちらは知り取る。むこうは青血、黒血、赤血、真血を吐け。泡を吐け」
燐光が光を増し、それを浴びた呪詛の靄が水っぽい音を立てて爆ぜ、地面に落ちる。床には血溜りが出来ている。
「即座味塵に、まらべや。天竺七段国へ行えば、七つの石を集めて、七つの墓をつき、 七つの石の外羽を建て、七つの石の錠鍵おろして、味塵、すいぞん、おん・あ・び・ら・うん・けん・そわかとおこなう」
痙攣、毒の末期症状のように靄が震え地面を這いつくばる。触手を先へ先へと伸ばし逃げ惑う。壁を引っ掻き回し必死に安全地帯を探す。千星空の詠唱は止まない。決して弛まない。
「打ち式、返し式、まかだんごく、計反国と、七つの地獄へ打ち落とす。おん・あ・び・ら・うん・けん・そわか!!」
風が邪気を祓い飛ばす。もはや人の声ではない叫びが通気口へと押し脅される靄から吐き出される。
後に残ったのは霧乃と千星空。藤原家の義兄妹のみ。
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